給食がなくなる夏休みが苦しい、児童文学が描く「子どもの貧困」のリアル 作家・中島信子『八月のひかり』に込めた思い

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本当に必要な人に届いているか

──フードバンクでは届ける相手の顔が見えるということでしょうか。

フードバンク狛江のお渡し会などでは、会員やボランティアの皆さんが、「あの子がまた来てくれたね!」と喜びます。来なくなったのは、生活が改善したからかもしれませんが、そうでないかもしれない。だから、元気な顔を見られる、お菓子が渡せるというのはとてもうれしいことなのです。「重いよ〜」と言いながら食品を持って帰っていく姿を実際に見ると、フードバンクに入会してよかったなと思います。

それでも「貧困にあえいでいる人にきちんと届いているだろうか」と思う時があります。パソコンやスマホを持っていない人には、食品を提供している場所があるという情報が届いていないのではないかと。本来は「公助→共助→自助」であるべきなのに、今の日本は「自助→共助→公助」の順番になっていますよね。

──最後に、子どもたちに伝えたいことはなんでしょうか。

「あなたを本当に見つめてくれる大人を探して」でしょうか。それから、「自分の置かれた立場は自己責任ではない」ということです。今はいじめさえ子どもの自己責任だと言いますから。「貧困まで自己責任にするなんて、なんなんだこの国は」と思ってしまいます。

それから、図書館に行くなりして、ぜひ本を読んでほしいですね。その中に生きていく意味の答えがあるかもしれない。魔法の話でも一時の夢をもらえるかもしれないし、自分の未来を見いだせるかもしれません。よく言われるように、本は友達になりうるからです。

中島信子(なかじま・のぶこ)
児童文学作家、NPO法人フードバンク狛江副理事長
1947年長野県生まれ。東洋大学短期大学在学中に詩人・山本和夫氏に児童文学を学び、出版社勤務などを経て創作活動に入る。75年に北川千代賞佳作を授賞した『薫は少女』(岩崎書店)でデビュー。2019年、児童文学作品としては約20年ぶりに発表した『八月のひかり』(汐文社)が話題に。近著に『太郎の窓』『あしたへの翼 おばあちゃんを介護したわたしの春』(ともに汐文社)がある
(撮影:ヒダキトモコ)

(企画・文:吉田渓、注記のない写真:TATSU / PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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