国が、本気出す「日本の科学技術立国、再び」その教育秘策とは、いったい? 小中学生・育成プログラム「大学研究室配属」も

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かつては科学技術立国という名にふさわしい立場にあった日本。しかし、最近は欧米や中国との競争に後れを取っている事案も目立つようになり、科学技術分野を担う若手研究者の養成環境についても多くの課題が散見されている。こうした危機感から、将来の科学技術イノベーション人材を早い時期から育成しようと行政と教育・研究機関などが連携し、取り組んでいる人材育成事業が「ジュニアドクター育成塾」だ。小中学生を対象に大学・高等専門学校などが実施機関となって地域の関連機関と連携し、児童生徒の能力の伸長を目指すというこの取り組み。始まって5年ほどが経つが、子どもたちの個性や能力を伸ばす人材育成事業はどのように進展しているのか。同事業を推進する国立研究開発法人科学技術振興機構(以下、JST) 理数学習推進部 能力伸長グループ調査役の亀井威則氏に話を伺った。

国が「科学系人材育成」に本腰を入れた

将来の科学技術イノベーションを担う人材育成に向けて、高い意欲や突出した能力・資質のある小中学生を発掘し、さらに能力を高める体系的育成プランの開発・実施を行うというジュニアドクター育成塾。この人材育成事業がスタートしたのは2017年だが、どのような経緯で生まれた取り組みなのだろうか。

その契機となったのが日本経済の成長戦略を推進してきた「日本再興戦略」だ。13年に閣議決定され、以降、年度ごとに更新されてきたが、「日本再興戦略2016」の中で提言されたテーマの1つが「イノベーション創出・チャレンジ精神にあふれる人材の創出」だった。こうした流れを受け、文部科学省所管の国立研究開発法人であるJSTが育成プログラムの開発を支援する形で生まれたのが「ジュニアドクター育成塾」だ。同事業を担当するJST理数学習推進部 能力伸長グループ調査役の亀井威則氏が次のように語る。

亀井威則(かめい・たかのり)
国立研究開発法人科学技術振興機構 理数学習推進部 能力伸長グループ調査役。2005年入職。理科教員向けのデジタルコンテンツの制作、国際科学オリンピック支援など、才能育成に関わる事業の推進、研究開発従事者向けの科学技術イノベーション人材育成プログラムの企画・運営などを経て22年より現職。ジュニアドクター育成塾など、能力や資質の高い児童生徒の発掘とさらなる伸長を目的とする事業の推進を担当している
(写真:JST提供)

「『日本再興戦略2016』の中で、理数情報系分野に関して高い意欲や突出した能力・資質のある小中学生に対する取り組みが希薄であり、とくに優れた能力・資質を持つ子どもを伸ばす取り組みの不足が指摘されました。そこでJSTは『ジュニアドクター育成塾』を立ち上げ、子どもたちの能力を伸ばす育成プログラムを開発する実施機関を支援していくことになったのです」

JSTは国の科学技術・イノベーション基本計画にのっとって、研究開発、産学連携、次世代人材育成など、多岐にわたる事業を科学技術振興のために実施している。 JSTの理数学習推進部 能力伸長グループでは、すでに09年から「女子中高生の理系進路選択支援プログラム」、14年からは高校生を対象とした「グローバルサイエンスキャンパス」も実施しており、次世代人材育成事業の最新の取り組みが、この小中学生を対象とした「ジュニアドクター育成塾」となる。

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