児童文学評論家・赤木かん子の「学校図書館ビフォーアフター」がすごい 「1980年代からほとんど変わっていない」大問題

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

図書館には基本的に、本棚と机といすしかありません。この3つを使って部屋を設計するわけですが、1つの部屋で気持ちよく過ごせるようにするための家具の数は、決まっています。ぎゅうぎゅうに詰められると居心地が悪くなります。

部屋は、全体を統一してデザインすること。まずは変えられる物と変えられない物はどれかを考えます。たいてい床とテーブル、いすは変えられませんね。本の色はいろいろあるので、変えられるなら本棚は白で統一したほうがいいと思います。白は膨張色なので、部屋が広く見えて、かつ明るくなります。

「キース・ヘリングできめました」と赤木氏が話す福山市立戸手小学校の図書館。棚はほとんどが白でそろっている
(写真:広島県福山市提供)

床、本棚、いすの背もたれ、カーテンに合わせて色を決めていきますが、それらがちぐはぐならば、壁に布を張って、中和させることを考えます。赤紫色のいすだったときは、ハイビスカスの布を張りました。紫色の床だったときは、薄いラベンダーのカーテンにしました。机は大きいので、色が邪魔をするときにはテーブルクロスをかけます。

福山市立宜山小学校の図書館。左上・左下の写真が改修前、右上・右下が改修後。茶色い机にテーブルクロスをかけたり、壁に布を張るなどして全体的に明るい印象になっている
(写真:広島県福山市提供)

居場所としては心地よくても、必要な本がきちんと整理されていないと図書館としては失格です。逆に面白い本があっても、居心地が悪ければ利用しようとは思わないでしょう。両方がそろって、居心地のよい図書館が出来上がります。

――最近パソコンで情報を検索する人も多いですが、ネットの情報と本との役割の違いは何でしょう。

ネットの情報は、単発の情報です。整理する能力がついている人間には使えますが、まだ整理することを知らない人間は、単発の情報だけだと使えません。本は、山のようにある情報を精査して集め、整理してあります。情報が整理されて端的に表現されているから、本を読んだら定義と概要がわかる。ある小学生が「ネットは情報を教えてくれるけど、本は考え方を教えてくれるから図書館に行きます」と話していたのですが、そのとおりだと思います。

人間は得た知恵を本として記し、次の世代へバトンのように渡すことに成功しました。ゼロから始めなくても、先人の知恵を受け取ってその先に進める。時間を超えてつながれてきたから、私たちは2000年前の人が何を考えていたかわかります。だから多くの子どもたちに、図書館を利用して、知恵の宝庫である本を読んでほしいと思います。

――そのためにテコ入れしなければならない図書館も多そうです。

私はほとんど見直しが必要だと思っています。80年代までは文学だけだったから素人でもいけたかもしれない。でも今は自然科学や社会科学が入ってきて、図書館をつくれる人がいません。頑張っている先生もいますが、先生に図書館をつくって!は酷だと思います。全体を知っている人がつくるべきで、きちんと司書を雇ってほしいですね。

(文:柿崎明子、注記のない写真:尾形文繁撮影)

東洋経済education × ICT編集部

東洋経済education × ICT

小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事