児童文学評論家・赤木かん子の「学校図書館ビフォーアフター」がすごい 「1980年代からほとんど変わっていない」大問題
図書館の本は、基本的に日本十進分類法(NDC)で分類されています。公共図書館だと小見出しが3000ぐらいある所もありますが、学校図書館のサイズだと細かくなりすぎるので、同じ物は同じところに集めて分類の数を減らしていきます。
例えば、医学の棚には、学校ならば脳卒中や心筋梗塞という分類は要りませんよね? 人体の仕組みには、小学校ならば歯を入れます。中学では、もう作りません。数学は、高校であれば数Ⅰから数Ⅲまで分類しますが、小・中学校ならば数学は1つでいいでしょう。今ならば統計は棚を作ってもいいかもしれませんね。
要は児童生徒が必要な本を、早く探し出せるようにするためにはどこまで分けたらいいのか、考えて分類することが大事です。いくらNDCにのっとったとはいえ、植物の本が2カ所にあったらわからないでしょう。
一方で、やってはいけない分類もあります。例えば、低学年と高学年を分けること。昔は確かに年齢で読むものがはっきり分かれていましたが、今は一緒です。飛ぶ虫と飛ばない虫とで分類している図書館がありましたが、分類体系の根幹を無視すると、すぐ行き詰まります。枝葉のところを工夫してください。そうやって各ジャンルを整理していくと、次に何の本を購入すればいいか計画を立てやすくなります。
――図書館のレイアウトにコツはありますか。
まず、最初にカウンターの位置を決めます。コンセントがあってコンピューターが設置でき、なるべく死角がない所に置きます。本棚は壁の周りに置いて、できる限り部屋の真ん中を空けます。暗くならないように、窓際には低い棚を置きます。本を傷めないよう、日差しが直接本に当たらないように注意しましょう。ただし、部屋のサイズや形は違うので、臨機応変な対応が必要です。
本の配置は、自然科学はいちばん大きいサイズが38センチありますから、高段書架を5本以上並べられる所に設置します。宇宙や鳥の本を上に、魚や植物の本を下にします。これが逆だと不安定な部屋になります。世の中の常識と違うと、無意識であっても人間は疲れるからです。
環境汚染は独立させてもいいし、生態系や工業系などに入れてもいいと思います。分野がまたがっているSDGsは、ちょっと厄介ですね。まずSDGsとは何かという本を集める。そして学校の先生方が、今年は何をテーマに学習するかをリサーチします。例えば世界の貧困や気候変動だったら、それらを併せて一時的に集めておきます。
図鑑は重いので、自然科学の前にカーペットやソファを置いて、広げて読めるようにすればいいと思います。社会科学は、地図以外はA4で入るので、次は社会科学のグループをつくる。物語はサイズが小さいので、空いたスペースを利用します。パーツを切り分けて、大きい物から小さい物へ、パズルのように配置して決めていきます。

(写真:広島県福山市提供)
昭和30年代に造られた学校図書館は、書架の大きさが文学仕様です。本が変わったのに本棚が変わらないのは困ります。お勧めはIKEAのBILLY(ビリー)で、安価で購入できます。補強のための棚板を足しても、1棚1万5000円ぐらいで作れますから、本棚としては破格の安さです。
居心地のよい図書館とは
――児童・生徒が居心地のよい図書館にするためには、どんなことに気を付ければいいですか。
いちばん最初は掃除です。ほこりだらけの部屋に、人はいられません。床や机、いすだけでなく、壁、天井も拭きます。水平になっている所には、ほこりがたまります。エアコンの上やカーテンレールの上も忘れずに。書架から全部本を出して、棚板を拭き、本も拭いてから戻します。電球も外してメラミンスポンジで拭く、白い反射板もきれいにします。これでずいぶん明るくなります。カーテンも外して洗いましょう。