日銀はついに「ルビコン川」を渡ってしまうのか 国債発行残高の50%以上を保有する意味とは

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日本銀行が日本国債の10年物利回りを0.25%以下に抑えるため最近行った国債購入の規模とスピードは、これ以上ないほど際立っている。6月はまだ終わっていないが、日銀が今月に入って買い入れた国債は、すでにこれまでの月より25%余り多い。それでも10年債利回りを辛うじて上限以下に抑えられているに過ぎず、日銀の購入は全年限に及んでいるにもかかわらず他の年限の利回りは上昇している。

 

日銀はイールドカーブコントロール(YCC)を通じ、日本国債発行残高のほぼ50%を保有。2001年に「一時的」措置として量的緩和を開始した際には、想像もしなかった地点に達している。国債市場でこれほど多くを保有している主要な中央銀行は他になく、日銀が踏み入れようとしているのは未踏の領域だ。

日銀が保有する国債は今週にも発行残高の50%を超えるが、そうなれば日銀はルビコン川を渡る。どう考えてみても、日銀が日本国債市場そのものになるのだ。これが長期的に何を意味するのか判明するのは先だろうが、国内外で日本国債を保有する民間投資家にとって、こうした偏った市場の居心地がいいはずはない。

日本の民間セクターは国債を大きくオーバーウエートとする一方、株式はアンダーウエートだ。日本のインフレ率は最近、10年ぶりの高水準を記録し、円安は一段のインフレ高進を招くとみられている。日本国債の保有が日銀に集中しているリスクは、インフレが制御不能になる兆しが生じれば、国債からインフレに比較的強い株式へと資金が一斉にシフトする可能性が高いことを意味している。国債市場の半分を占めることで、日銀は転換点を迎えるだろう。世界3位の債券市場が売りを浴びれば、その損失を一手に引き受けるのは日銀ということになる。

原題:The BOJ Is About to Cross the Rubicon on JGBs

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著者:Simon White

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