降水確率30%でも大雨になることがある理由 傘を「持つ」「持たない」の境目を気象予報士が解説

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たとえ降水確率が30%以下でも、傘を持ったほうが良い日があります。特に夏は、降水確率だけで判断できないことが多い季節です。

降水確率が低くよく晴れていても、天気が急変して急な強い雨、いわゆるゲリラ豪雨に見舞われることがあるからです。

天気急変で5000人以上が帰宅困難に

実際に、天気が急変して大雨になった事例を振り返ってみましょう。

2017年8月19日、東京都世田谷区で「たまがわ花火大会」が予定されていました。

当日の朝に発表された東京の天気予報は「くもり」で、午後の降水確率は30%です。

雲が多いながらも晴れ間があり、東京の最高気温は30.3度で真夏日になりました。暑い中で、屋台の準備が行われたり、場所取りをする見物客が訪れたりしていたそうです。

ところが、午後5時頃から雷を伴った雨が降り出し、花火大会は中止になってしまいました。

世田谷では1時間に38.0ミリの激しい雨が観測され、雷鳴が何度も何度も轟き、ひょうが降ったとみられます。

また、練馬では1時間50.0ミリの非常に激しい雨が降り、観測史上2位の記録となりました。

2017年8月19日の天気図(出典:weathermap)

当日の天気図です。上空に流れ込んだ寒気が一因となり、局地的に積乱雲が発達しました。

2013年8月15日は、長野県諏訪市で「諏訪湖祭湖上花火大会」が開催されました。4万発もの花火が打ち上げられる全国的に有名な花火大会の1つで、長野県外からの見物客も多く、毎年50万人ほどが訪れていたそうです。

当日の朝に発表された長野県中部の天気予報は「晴れ時々くもり」で、午後の降水確率は30%でした。

よく晴れて諏訪の最高気温は33.7度まで上がっていましたが、花火大会が始まる前の午後4時前後から急な雷雨となりました。

その後、雨の降り方が弱まったため、花火大会は予定通り午後7時から開始されたそうです。

しかし、始まって30分ほどで再び雨が強まり、非常に激しい雨が降ったのです。諏訪のアメダスでは1時間74.5ミリの雨を観測し、今でも観測史上1位の記録となっています。

花火大会が中止になっただけではなく、JRなどの公共交通機関が運転を見合わせ、高速道路は通行止めとなってしまい、5000人を超える見物客が帰宅できずに公共施設で一夜を過ごしました。

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