教員不足「さほど深刻ではない、もっと教員を減らすべき」の大いなる盲点 少子化の一方で急増する特別支援学級と仕事量

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これは、正規教員を多く採用しても、今後も進む少子化の中で、将来教員があぶれてしまう(過員となる)ことを恐れているからだ。非正規教員への依存の高まりも、また、今日の教員不足の背景、要因となっている。教員採用試験に不合格だった人に講師登録をしてもらい、年度途中であっても必要なときに講師として来てもらうという、自治体・学校にとって都合のよかったシステムでは、立ちゆかなくなっている。

かつては、教員になるのがずっと難しかったので(地域差や校種の差はあるが)、実績にもなって採用上少しでも有利にしたいということで、非正規の講師であっても希望する人は多かった。だが、ここ数年は採用試験の倍率が低下していて、不合格者数が減っているため、講師候補者の絶対数は減っている。講師登録せずに民間などに就職する人も多い。しかも、常勤講師になれば、忙しい日々が待っていて、採用試験の勉強どころではなくなるので、採用試験に受かりにくくなるケースもある。

そうした結果、講師バンクがこの4月ですでに枯渇している自治体もあると聞く。過去にうまくいった仕組みでは、うまく回らなくなっているのに、モデルチェンジできていない。

教員をどれくらい採用するかは各都道府県・政令市の権限、裁量であって、文科省の仕事ではない。各自治体の採用計画が妥当なものだったかどうか、教員不足のリスクをもっと重く見て採用計画を見直すべきではないか、といった点は、よく検証されるべき話である。

とはいえ、同時に踏まえる必要があるのは、国の責任についてだ。一部の自治体から見れば、この15年余り国による教職員定数改善計画は示されず(つまり、教員数について国による支援が将来拡充するという保証はなく)、加配教員も毎年の予算折衝で確保されるかどうか不安定な中では、自治体裁量だといっても、正規教員枠を安心して拡充できない状態が続いた。

以上をまとめると、教員不足の実態を把握するには、文科省調査だけでは問題、限界がある。また、不足の背景にはかなりいろいろな事情が入り組んでいて、国と自治体双方に反省が必要なところがある。誰かだけを悪者にしてスッキリする話ではないし、教員数を減らさないでいたから不足しているのだ、という主張は現実を的確に捉えているとは言えない。

私は、こうした問題意識に立って、日本大学の末冨芳教授とSchool Voice Projectとともに、教員不足の実態調査と政府(国、自治体)などへの政策提言を進めている(なお、本稿は筆者個人の責任のもの)。「#教員不足をなくそう緊急アクション」という名称で、主な活動内容や提言についてはこちらを参照いただけると、ありがたい。

今回は想定される疑問や批判について少し検討したが、今後もさまざまな意見やアイデア、検証結果などをよく踏まえて、教員不足の問題が一刻も早く解消するように、取り組んでいきたい。

(注記のない写真:Fast&Slow / PIXTA)

執筆:妹尾昌俊
東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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