中国の李克強首相は7日、「複雑で厳しい」雇用情勢について警告し、何カ月もそうした警告を発していた人々をも危惧させたが、それが注目される理由はほかにもある。習近平国家主席が推進する「ゼロコロナ」戦略への言及がなかったことだ。
数日前には共産党中央政治局常務委員会が上海を含む国内各地のロックダウン(都市封鎖)につながった同戦略について、疑いを挟まないよう警告したばかり。同委の声明に経済に関する言及はなかった。
中国最高指導部からのちぐはぐなメッセージは、新型コロナウイルスを一掃し、経済成長を可能にする方法を見つけなければならない地方当局者の混乱を招いただけでなく、コロナ禍を脱出する最善の方法を巡り指導部内で意見が割れているのはないかとの疑念をもたらした。
ローウィー研究所(シドニー)の上級研究員で「中国共産党 支配者たちの秘密の世界」の著者リチャード・マクレガー氏はそうしたメッセージについて、「コロナとその影響に関する指導部内の意見の相違を表している。さらなるロックダウンは経済的損失に見合った価値があるかどうか、中国は真剣な議論が必要な段階を迎えている」との見方を示した。
ワクチン普及と死者数減少に伴い、世界の多くの国・地域が通常の生活への復帰を目指す中、中国はゼロコロナ政策を堅持している。ロックダウン頼みの同政策により、上海では2500万人の住民の多くが1カ月以上にわたって制限下に置かれ、首都・北京でもこのところ規制がさらに強化されている。
北京に本拠を置くコンサルティング会社トリビアム・チャイナの上級アナリスト、アンディ・チェン氏は、中国指導者らの間で政策の優先課題が食い違っているとは考えていないとして、党を運営する政治的リーダーの習氏とは対照的に、李首相は経済に焦点を当てなくてはならないと指摘した。
「コロナ感染抑制は力強い経済モメンタムを維持する前提条件・基盤だと当局は捉えている。したがって、雇用確保を強調することはコロナ対策の方が優先度が低いという意味ではない。コロナ対策は今も最優先事項だ」とチェン氏は語った。
マクレガー氏は、退任の準備を進める李首相が政策課題に関する主張を強めるかどうかが注目されると指摘。「鍵となるのは、李首相が経済について公の場で発言し続けるかどうかだ。その場合は、対立が本当に起きている可能性がある」と述べた。
原題:Mixed Messages From Top China Leaders Feed Speculation of Split(抜粋)
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著者:Bloomberg News
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