教育専門家が選ぶ「子どもの教育」のいろいろな悩みを解決してくれる11冊 GWに読みたい!ほめ方・叱り方から勉強法まで

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「水平化する世界の中で、どのように教育を適応させていけばよいのでしょうか。インターネットの普及、新興国の発展、物流網の発達、そして機械との競争によって『同じことだけすればよい人』は『何もしなくてよい人』になりつつあります。本書は、そのような世界の潮流において、『子育てとイノベーション』という切り口から、子どもの内的モチベーション(向学心、好奇心、想像力)について実証的に示唆を与えてくれます」

本書では、エンジニアや起業家、デザイナー、社会起業家、そして彼らの両親、さらにはGoogleやアップルなど独創的な起業の人材開発担当者、MITやスタンフォードの教育者など多くの人に取材をして見えてきたイノベーションに必要な能力とは何かについてまとめている。

4. 『センス・オブ・ワンダー』(著:レイチェル・L. カーソン)

藤原さと(ふじわら・さと)
一般社団法人「こたえのない学校」代表理事
(写真:藤原氏提供)

かつては、技術力によるイノベーションによってビジネスを勝ち抜くことができる時代もあったが、変化がいっそう激しくなり簡単にイノベーションを起こすことが難しくなっている。

学校現場では、そんな変化の激しい時代を生き抜くための資質、能力を育成するために「主体的・対話的で深い学び」の実現に取り組んでいる。これまでは「正解のある問い」を勉強してきたが、実際の社会では正解があることは少なく、自ら課題を見つけて解決する能力を身に付けるためだ。そこで取り入れられたのが探究型の学習である。

2014年と早くから、「良質な探究の一般普及」を理念に、一般社団法人「こたえのない学校」を設立したのが藤原さと氏だ。探究学習をコンセプトとする教育関連プログラムの企画・運営などを行っている。そんな藤原氏が、探究学習の本質を学ぶうえでの良書として薦めるのが『センス・オブ・ワンダー』(著:レイチェル・L. カーソン/新潮社)だ。

センス・オブ・ワンダー
『センス・オブ・ワンダー』(新潮社)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

「これからの社会、『考えるーThink』も大事ですが、それと同等かそれ以上に大事なのが『感じるーFeel』です。さまざまな国や多様な文化背景を持つ人たちとコミュニケーションを取りながら、今までにないものを喜びの中で創造するに当たって、論理思考だけではもはやカバーできないものがあまりにも多い。そして、その感性は自然との美しい触れ合いの中でこそ育まれるということを、科学者でもある著者が情緒豊かな文章でつづっています」

レイチェル・カーソンは、化学薬品による環境汚染にいち早く警鐘を鳴らした『沈黙の春』の著者として広く知られている。本書では、その著者が毎年夏の数カ月を過ごしたメーン州の海岸と森が描かれている。そこには、すべての子どもが生まれながらに持っている「センス・オブ・ワンダー」、神秘さや不思議さに目を見張る感性をいつまでも失わないでほしいという著者の願いが込められているという。大人は何でも、つい先回りをして知識や正解を教えてしまいがちだが、子どもの好奇心や探究心を刺激して感性を育てることの大切さを教えてくれる1冊だ。

5. 『大量廃棄社会 アパレルとコンビニの不都合な真実』(著:仲村和代、藤田さつき)

山藤旅聞(さんとう・りょぶん)
新渡戸文化中学校・高等学校 副校長・学校デザイナー・生物教諭、一般社団法人Think the Earth
(写真:山藤氏提供)

ここ数年、学校では教科の指導とは別に、社会の変化に応じて生じるさまざまな課題に対応する教育が行われている。SDGs教育も、その1つだ。

SDGsを授業で積極的に活用している新渡戸文化中学校・高等学校 副校長の山藤旅聞氏は、SDGsの知識を教えるというよりは、子どもたち自身の未来をつくるためにSDGsの目標が必要かどうかを考えさせることが大切だという。

そんな山藤氏が、『大量廃棄社会 アパレルとコンビニの不都合な真実』(著:仲村和代、藤田さつき/光文社)を薦める理由について、こう話す。

大量廃棄社会 アパレルとコンビニの不都合な真実 (光文社新書)
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「日本のSDGs認知度は80%を超えてきました。とてもすばらしいことです。私は教育者として学校現場でSDGsを活用した未来づくりの教育デザインを全国の皆さんと協議・実践しています。全国の教育現場で感じるのは、SDGsの理解や、SDGsにどう関わっているかを考える授業は広がりを見せていますが、本質的な解決に向けての構造を理解したり、解決に向けての具体的な行動を創造したり、その行動を広げていくためのデザインはとても弱い気がします。

本書は、毎日の生活である食べ物や着る服を切り口に、まずは地道な取材を通じて得られる1次情報を獲得する重要性や、社会課題と自分とのつながりを知り、取材によって世の中を正しく自分の力で理解していくお手本が示されています。また、すでに取り組まれている解決行動の豊富な事例や、1人の意識変容から小さな行動変容が起き、その小さな行動変容の広がりが、いずれは大きな社会変容につながるということを信じることができる内容になっています。結果的に、SDGsの本質を理解し、SDGsの解決に向けて自分に何ができるかを自問自答できるきっかけを与えてくれる良書です」

6. 『アメリカの高校生が学んでいるお金の教科書』(著:アンドリュー・O・スミス)

大河内 薫(おおこうち・かおる)
税理士、ArtBiz代表取締役
(写真:ArtBiz提供)

今年4月からスタートした高校の新学習指導要領では、「公共」で金融経済を、「家庭科」で資産形成を学ぶことになっている。これまで金融教育は、学校という空間になじまないとされてきた。だが、毎日の生活と切り離すことができない「お金」に関する教育を受けることは、必ずや将来生きていくための武器となるはずだ。

これまで義務教育における金融教育の必要性について啓発活動を行ってきた税理士の大河内薫氏は、「毎日使う日本語や数字は、国語や算数の授業で学ぶのに、なぜ毎日使うお金のことは学校で学ばないのか」と、かねて疑問を呈してきた。「親もお金の教育を受けていないので家庭で教えることも難しい」と話す大河内氏は、そんな保護者に向けて『アメリカの高校生が学んでいるお金の教科書』(著:アンドリュー・O・スミス/SBクリエイティブ)を薦める。金融教育先進国の米国でも、高校の授業でお金の基本を学ぶという。

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