「ウクライナ緊迫」が招くエネルギー市場の騒然 JOGMECの野神氏に今後のシナリオを聞く

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資源高に拍車がかかれば日本への影響は甚大だ。ウクライナ情勢を中心とした地政学リスクがエネルギー市場に与える影響について聞いた。

2021年11月、ロシアのプーチン大統領はクリミア半島のセバストポリを訪れた(写真:AFP=時事)

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激しい値動きで調整色を強める世界の株式市場。その背景にはアメリカの金融引き締めや景気腰折れに対する警戒感に加え、ウクライナ問題など地政学リスクが投資家心理に及ぼす重圧がある。

ウクライナでは10万人規模といわれるロシア軍の部隊が国境付近に集結。2014年のクリミア併合以来のウクライナ侵攻が危惧され、米欧は周辺の東欧地域に派兵する準備に入った。

情勢の緊迫化により、ロシアから欧州への天然ガスや原油の供給が滞る懸念が高まり、エネルギー価格が軒並み高騰している。さらに中東では、アラブ首長国連邦(UAE)でイエメンの親イラン武装組織による石油施設への攻撃が発生した。

このまま資源高に拍車がかかれば、世界的にインフレが加速し、各国の中央銀行が金融引き締めを急ぐ可能性がある。結果的に世界景気の失速につながりかねないという不安が市場内で増大している。エネルギー資源の大半を輸入に依存する日本にとっても影響は甚大だ。

ウクライナ再侵攻が起きた場合、エネルギー市場はどうなるのか。もしアメリカとロシアの間で妥協が成立したらどうか――。独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の野神隆之・首席エコノミストに、ウクライナ情勢を中心とした地政学リスクがエネルギー市場に与える影響について聞いた。

市場が想定する最悪シナリオ

――緊迫化するウクライナ情勢の現状についてどう見ていますか。

アメリカやヨーロッパの各国政府がウクライナからの自国民の退去命令を出すなどロシア軍による侵攻に備えた動きを見せているが、実際に侵攻や軍事衝突が起こるかは微妙で、極めて不透明感が強い。この先の外交交渉によっては回避できるだろうが、偶発的な軍事衝突が発生する可能性もあり、かなり幅広いシナリオが想定されるのが現状だ。

のがみ・たかゆき/石油天然ガス開発推進本部首席エコノミスト。1987年石油公団入団。1995~1997年、通商産業省資源エネルギー庁。2001~2003年、国際エネルギー機関(IEA)に勤務後、石油公団企画調査部調査第一課長などを経て2018年より現職。(写真:JOGMEC提供)

外交手段で妥協が成立し、ロシア軍がウクライナ国境付近から撤退して、NATO(北大西洋条約機構)軍もロシアを刺激しないような対応を取る可能性も考えられる。

ただし市場は、そうしたシナリオを織り込むのは楽観的すぎると考え、むしろ偶発的な軍事衝突という最悪シナリオを想定する。その場合、ロシアが天然ガスや石油を武器に使って欧州向けの供給を止めてしまうのではないかという懸念が、昨今の石油・天然ガス価格の上昇につながっている。

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