転換期を迎えた「金融相場」はどこへ向かうのか 波乱続く日米株相場の焦点は金融政策とインフレ

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世界の株式市場が新年早々から波乱の展開となっている。今後の焦点はどこにあるのか。

コロナの感染が騒がれ始めた2020年初めの日米株式相場(編集部撮影)

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コロナ禍での超金融緩和を背景に高騰していた世界の株式市場が新年早々から波乱の展開となっている。

1月21日の取引終了時点で、アメリカのS&P500株価指数は1月3日の最高値から8.3%下落。ハイテク株の多いナスダック総合指数は2021年11月の最高値から14.3%下げた。

アマゾンやテスラの株価は最高値からの下落率が2割を突破。「破壊的イノベーション」を掲げて巨額資金を集めたキャシー・ウッド氏率いるアーク・インベストメント・マネジメントの旗艦ファンド(ETF)は、投資口価格が2021年2月高値の半値以下に沈んだ。一部のハイテク株の下げ方は2000年頃のITバブル崩壊すら彷彿させる。

日本株も連動する形で下落し、日経平均株価は一時2万7100円台まで落ち込んだ。2021年9月の戻り高値から約12%の下落となる。中小型株のマザーズ市場は昨年秋から3割以上も下げている。

コロナ下の金融相場は転換期へ

株安の主因は、アメリカの金融引き締め加速懸念とその背景にあるインフレ圧力の高まりだ。2021年12月のアメリカの失業率は3.9%と完全雇用に近づき、時間当たり平均賃金は前月比0.6%増と伸びが加速。前年同月比でも4.7%増と高水準にある。

賃金以上に上がっているのが物価だ。2021年12月の消費者物価指数(CPI)の上昇率は同7.0%と1982年以来最大を記録。食品とエネルギーを除くコア指数も同5.5%と21年ぶりの高い伸びを示す。一旦上がると下がりにくく、CPI全体の3割の比重を占める住居費(家賃)も同4.1%まで上昇率を高めた。1バレル60ドル台まで反落していた原油価格も85ドルを突破し、物価への影響長期化が懸念されている。

想定を超すインフレ進行に直面したアメリカ連邦準備制度理事会(FRB)は、金融政策の正常化を急ごうとしている。2021年11月に開始した量的緩和の縮小(テーパリング)を加速し、2022年3月に終了。その後あまり間を置かずにゼロ金利解除(利上げ)を開始する構えだ。市場はすでに2022年に4回(計1.0%)の利上げを織り込んでいる。

さらに、コロナ下で約9兆ドルへ倍増したFRBのバランスシート(総資産)を縮小する量的引き締め(QT)についても、早期かつ前回より速いペースで行う可能性が政策会合の議事録で示された。

ついに2022年半ばにもマネー回収が始まる――。矢継ぎ早の引き締め観測が金利上昇圧力を高め、10年物金利は一時1.9%近辺まで上昇。ゼロ金利下の過剰流動性で割高に買われたハイテク株を中心に株価が調整を強いられているのが現状だ。今後は景気を冷やしすぎない適度の金融引き締めで物価を抑制しつつ、金融相場から業績相場へと移行できるかが焦点となる。

今後の行方を専門家はどう見ているのか。運用総額10兆ドル(約1150兆円)に及ぶ世界最大の資産運用会社ブラックロックの日本法人で取締役CIO(チーフ・インベストメント・オフィサー)を務める福島毅氏、英国本拠の国際的な運用会社HSBCアセットマネジメントのグローバル・チーフ・ストラテジスト、ジョー・リトル氏、米国を代表する投資銀行ゴールドマン・サックスの日本法人で日本株ストラテジストを担当する建部和礼氏に今年1年の展望を聞いた。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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