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『アルゴリズムの時代 機械が決定する世界をどう生きるか』 『イップス 魔病を乗り越えたアスリートたち』ほか

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便利さに落とし穴はないか 人間が判断下す仕組み必要
評者/BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎

『アルゴリズムの時代 機械が決定する世界をどう生きるか』ハンナ・フライ 著/森嶋マリ 訳(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)
[Profile]Hannah Fry 1984年生まれ。英ユニバーシティー・カレッジ・ロンドン高等空間解析センター准教授、数学者。数理モデルで人間の行動パターンを解析する研究を行う。TEDトークで人気を集め、BBCなどのドキュメンタリーの司会も務める。

社会は極めて複雑だ。本来、日常生活でも、合理的な意思決定には、大量の情報を基にした複雑な最適化計算が必要である。しかし、それでは日が暮れるから、習慣や社会規範を利用して、時間を節約し対応してきた。

デジタル時代の到来で、人類はアルゴリズムという便利なツールを手にした。アルゴリズムとは、ある目的を達成するために作られた論理的手順のことで、AIなどに応用される。スマホの地図アプリで目的地を書き込めば、最適な経路と到達予定時間が瞬時に示される。便利さに落とし穴はないのか。数学者が買い物や交通、医療、法と犯罪、芸術など幅広く影響を探った。

ネット上には、閲覧履歴や注文履歴をもとに、一人ひとりの嗜好に合わせ、お薦めの商品が示される。最後は自分で判断したつもりが、誘導されたという疑念もぬぐえない。さらに、そうしたターゲット広告の手法が、知らぬ間に選挙にも悪用されていたとなると、看過できない問題だ。 

統計的差別も助長する。統計上、犯罪は低所得者層が住む地域で起こりやすい。AIがピンポイントで重点監視地域を選び出すことで確かに検挙率は上昇した。しかし、マイノリティーへの監視が増え、不当な対応も増加している。

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