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『9/11レポート 2001年米国同時多発テロ調査委員会報告書』 『9割の買い物は不要である 行動経済学でわかる「得する人・損する人」』ほか

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遺族が心血注ぎ翻訳 欠落する2つの分析
評者/キャリアアドバイザー 林 雅彦

『9/11レポート 2001年米国同時多発テロ調査委員会報告書』アメリカ合衆国に対するテロリスト攻撃に関する国家委員会 著/住山一貞 訳(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)
[Profile]アメリカ合衆国に対するテロリスト攻撃に関する国家委員会 同時多発テロの真相究明のために設けられた特別委員会。2004年に最終報告書を議会に提出。
すみやま・かずさだ 1937年生まれ。同時多発テロで息子の陽一氏を亡くした被害者家族。

本書は、「2001年米国同時多発テロ調査委員会報告書」全文の邦訳で、事件から20年の本年9月11日に刊行された。訳者は同時多発テロでご子息を失っており、今回が初の翻訳とのことだが、独力で大部な報告書を全訳されたことに敬意を表したい。

一読、無力感に襲われた。1998年に米国人へのテロを宣言したビン・ラディンは、同年のケニアとタンザニアでの米大使館爆破、00年の米軍駆逐艦への自爆攻撃により、多くの米国人を殺傷している。当然、米政府はビン・ラディンの捕縛、排除に挑み続けるが果たせなかった。

それは、政策の優先度、民間人を巻き込む可能性からの躊躇(ちゅうちょ)、割き得るリソースの限界等さまざまな要因によるもので、おのおのの判断には十分首肯できる。米国でこの結果ならば、日本などは固い意志の下のテロには手も足も出ないと改めて思う。

とくに喫緊の課題とされたのは、情報の共有や権限に関する各情報機関の間にある壁の除去だ。本事件直前に事件の察知につながるような事象が複数あったのだが、担当官の権限の問題、想像力や情報共有の欠如などにより察知の機会を逸したことが判明した。

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