東京電力の柏崎刈羽原発で相次いで判明したテロ対策の不備。問題の背景に何があったのか。原子力コンサルタントの佐藤暁氏に聞いた。
テロ対策の不備など核セキュリティ上の不祥事が相次いでいる東京電力ホールディングスに対し、原子力規制委員会が本格的な検査に着手している。
原子力規制庁の検査官が10月26、27日、新潟県の東京電力柏崎刈羽原子力発電所を訪れ、関係者への聞き取り調査を実施した。今後、1年をかけて約20人の体制で2000時間にのぼる検査を続ける。
同原発では原子炉の運転員が他人のIDカードを不正に使用して中央制御室に入っていた問題が発覚したほか、外部からの侵入者を検知する設備が故障したまま、復旧までに最長で337日を要していたことも判明した。
原子力規制委は3月16日、同原発が「核物質防護上、重大な事態になりうる状況にあった」と判定すると同時に、4月14日に原子炉の運転を事実上禁止する命令を出した。規制委は長期にわたる検査を通じて不祥事の根本原因や再発防止策の妥当性について解明する方針だ。
原子力発電所の安全対策や核セキュリティ問題に詳しい原子力コンサルタントの佐藤暁氏に問題が起きた背景などについて聞いた。
アンケートに現れた問題の深刻さ
――不祥事を受けて東京電力と独立検証委員会が9月に出した報告書をどのように読みましたか。
IDカード不正使用と不正侵入検知装置の機能喪失放置という問題が起きた根本原因として、東電が公表した132ページにわたる改善措置報告書は、「リスク認識」「現場実態の把握」「組織として是正する力」の3つの弱さを特定した。そのうえで、短期、中期、長期の改善措置を実施するとしている。
報告書はそれなりに意味のある内容となっており、重大性の認識や再発防止への覚悟など、経営者が必死にアピールしている印象を抱いた。ただ、一連の取り組みが本質的な改善につながるかについては疑問を抱かざるを得ない。
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