原子力のあり方を正面から議論をすることなく、なし崩し的に原発の運転延長だけが決まっていくことになりかねない。
2022年末、岸田文雄政権が原子力政策を大転換したという報道が相次いだ。政府は12月22日に開催した「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」でGX実現に向けた基本方針案を取りまとめたからだ。
この方針案では、既存原発の運転期間について追加延長を認めるほか、政府が明言していなかった原発の建て替え(リプレース)も進める方針を示した。パブリックコメントを経て、早ければ1月末にも閣議決定がなされる。だがこれらの方針を「大転換」と評するよりも、従来のエネルギー政策との整合性が十分整理されないまま、政策の修正が行われようとしていることに目を向けるべきだろう。
運転延長はあくまで「例外的」な措置だった
日本の中長期のエネルギー政策を示す、エネルギー基本計画では2011年に発生した東京電力福島第1原子力発電所の事故を踏まえ「原発依存度の低減」が掲げられてきた。これは2021年10月に閣議決定した現在の基本計画でも同じ。そのため、段階的な廃炉が政府の示してきた方向性だった。
2012年には原発の運転期間を「原則40年」とするルールを導入。運転延長についても原子力規制委員会の許可を得れば、最大20年間の延長が認められることになった。ただ、これは「例外的に運転を継続する形」(当時の細野豪志・原発事故担当相)だった。
GX実行会議でまとめられた基本方針案はこうだ。従前の原則40年、追加延長で20年という大枠は変更しないが、規制委の審査などで原発が運転停止していた期間などを除外することができるようになる。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
登録は簡単3ステップ
東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
おすすめ情報をメルマガでお届け
無料会員登録はこちら
ログインはこちら