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『リスク、不確実性、利潤』 『ケア宣言 相互依存の政治へ』ほか

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新たな着想生みうる古典 先駆的な能力主義批判も
評者/名古屋商科大学ビジネススクール教授 原田 泰

『リスク、不確実性、利潤』フランク・H・ナイト 著/桂木隆夫、佐藤方宣、太子堂正称 訳(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)
[Profile]Frank Hyneman Knight 1885年生まれ。20世紀を代表する米国の経済学者。自由主義市場経済体制を擁護し、ケインズ主義的経済介入に異議を唱える「シカゴ学派」の始祖として知られ、M・フリードマンやR・コースらに影響を与えた。1972年没。

広く論文、書籍で引用、言及されながら読まれない古典がある。そこに示された新しい概念は、より理解しやすい形ですでに教科書に取り入れられており、あえて読む必要がなくなっているからだろう。

一方、それでも古典が読まれるのは、整理されすぎた記述にはない原典の力、洞察、忘れられた指摘があって、それらが新たな知を喚起することがあるからだ。

本書はそうした古典の新訳だ。ナイトの主張を要約すれば、確率によって予測できるリスクと予測できない不確実性は峻別されなければならず、利潤は不確実性によって生まれるということだ。

こう言ってしまえば簡単だが、この区別の重要性を、コロナ禍の現在、われわれは思い知らされている。リーマンショックなら、リスクを他人に押し付ける金融市場のモラルハザードの問題などと、少なくとも後知恵では解説できるが、コロナの経済的ショックとなると、不確実性としか説明できない。

また、ナイトは、人口の単調な変化は予見可能であり、このような変化であれば未来はあたかも変化がないかのように正確に予見されると述べている。人口減少で打つ手がないかのように愚痴る日本企業が多いが、ナイトであれば、ビジネスの不確実性に挑戦すべきだと批判するのではないだろうか。

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