江戸儒学の革命性と男女意識の変遷描く
評者/関西大学客員教授 会田弘継
名著『日本政治思想史 十七〜十九世紀』を著した碩学(せきがく)による待望の新刊である。徳川体制の崩壊による日本の革命的な変革から、その裏側で起きていたジェンダー意識の変化まで、博覧強記の著者の案内で、読者はめくるめくような知の「冒険」に誘われる。旧著を知る読者は、著者の道具箱をのぞき見る気分にさせられるだろう。
とくに引き込まれるのは「『性』と権力」と題された第Ⅲ部で、本書の4割を占める。政治思想史にとってジェンダーは「中心的課題のひとつ」であるとお堅い前置きで始まるが、夫婦の仲、男らしさ、女らしさに関する考え方が江戸時代から明治期にかけ、どう揺れ動き、変わっていったかを、時にユーモラスな引用なども交え、読ませる。
男子は外、女子は内と厳密に区別する儒教の「夫婦有別」に対し、江戸期の日本では「夫婦相和シ」という言葉に象徴されるように、区別ではなく和合が強調された。中国と日本とで女性の立場が異なるのは、江戸末期に日本を訪れた西洋人の目にも明らかだった。
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