有力機関による調査・研究リポートからビジネスに役立つ逸品を選りすぐり、そのエッセンスを紹介。
炭素価格導入の経済的影響
── エネルギー課税の使途見直しも課題
2050年にカーボンニュートラルを実現する方針を、昨秋、菅義偉首相が宣言した。本リポートは、二酸化炭素排出に金銭負担を課すことで企業や消費者に行動変化を促すカーボンプライシング(炭素価格)導入の影響と課題を論じるものだ。
国際エネルギー機関は、パリ協定の目標達成の前提条件の1つに炭素価格の段階的導入を織り込み、40年の先進国の炭素価格水準を140ドル/トンと想定。これを日本に当てはめて、排出量を13年度比46%削減という30年の中間目標の水準で考えると、負担額は11.6兆円。2.6兆円と試算される「地球温暖化対策のための税」(温対税)やエネルギー関連の課税分を除いて、約9兆円の負担増が見込まれる。
これが家計に転嫁されると、家計費は総世帯平均で約4%上昇すると試算された。生活インフラの価格上昇は、低所得層にとくに大きな影響を及ぼす。本リポートは、炭素価格については経済への影響に注意して段階的に導入し、既存の炭素税(温対税)を拡大する場合は、使途が限られるエネルギー課税を一般財源化して、炭素税の政府収入を低所得層への所得再分配に充てられるような枠組みへの再設計が課題になると指摘している。
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