米軍が撤退するアフガニスタンで存在感を強める中国。米国への対抗心とイスラム勢力への警戒感が同居する。
8月15日、アフガニスタンのイスラム主義組織タリバンは、無抵抗の首都カブールを瞬く間に制圧した。19日には「アフガニスタン・イスラム首長国」の成立を主張。米軍とNATO(北大西洋条約機構)軍の撤退をきっかけとするアフガニスタン情勢の変化は転換点を迎えた。
その中で、中国は冷静に積極外交を展開している。王毅外相は、16日のロシアを皮切りに、米国、パキスタン、トルコ、英国などの外相と次々に電話で会談。18日には習近平国家主席も、イランとイラクの大統領と電話会談し、内政不干渉やテロへの反対を確認した。タリバン新政権の国際承認に向けた地ならしである。
他方で中国は、イスラム原理主義の復活を牽制するように、9日に自国国内で実施した軍事演習に初めてロシア軍を招待。19日からは中国とアフガニスタンの共通の隣国、タジキスタンでも2カ国合同の反テロ演習を実施した。
新情勢に向けた中国の布石は早かった。7月28日には他国に先駆け、王外相がタリバン幹部のバラダル師を天津に招いた。そして、タリバンをアフガニスタンの重要な政治力と認め、内政不干渉を約束する代わり、女性を含む多くの国民への寛容政策と、新疆で活動する「東トルキスタン・イスラム運動」などの「テロリスト組織」との線引きを要求した。中国外交部の発表では、タリバン側もそのディールを明確に受諾している。
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