格差拡大や気候変動、そして制御困難なテクノロジーの脅威。大乱世の時代を生きる私たちに必要なのは、危機の原因とそれを乗り越えるための道を示す思想を手に入れることだ。新マルクス主義とケインズ主義を軸に、大思想家が残した知恵を学び直そう。
斎藤幸平・大阪市立大学大学院准教授の新著『人新世の「資本論」』が人気だ。これまで埋もれていた晩期マルクス思想を基に気候変動問題の真因と解決策を論じたもので、版元の集英社によると、昨年9月の上梓から半年で20万部を突破。異例のヒットだ。
新型コロナウイルス対策のため、各国政府は未曾有の財政出動へ舵を切り、主要国の経済政策は「左」に大きくシフトした。斎藤氏が同著で説くのは脱資本主義、脱経済成長と、さらに急進的。閉塞感が強まる中、先入観にとらわれず、より幅広い考え方を吸収しようという読者が増えているのだろう。
資本主義の行き詰まりと民主主義の危機──。ますます強まるこの世界的な傾向は、戦後社会の繁栄を牽引してきた米国の威光が陰り、その信念が崩れ落ちつつあることと表裏一体である。それを大きく3つにまとめたのが下図だ。
第1は「資本主義が人々の生活水準を向上させる」との信念の動揺だ。その最大の理由は、経済成長力の低下を背景に上位1%の富裕層が多くの富を独占する格差や貧困化が先進国で進んだことにある。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
登録は簡単3ステップ
東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
おすすめ情報をメルマガでお届け
無料会員登録はこちら
ログインはこちら