
さいとう・こうへい 1987年生まれ。大阪市立大学大学院経済学研究科准教授。ベルリン・フンボルト大学哲学科博士課程修了。博士(哲学)。『人新世の「資本論」』が「新書大賞2021」大賞受賞。(撮影:梅谷秀司)
人類が地球を破壊するという「人新世(ひとしんせい)」の時代に、持続可能な経済をつくるにはマルクスの思想を、と訴えた若き研究者。一度は歴史の脇に追いやられたマルクスや共産主義が、なぜ21世紀に役に立つと言えるのか。
マルクス主義は現実解を示せるのか
いつになったら元の生活に戻れるのか。そう思いながらはや1年が過ぎた。新型コロナウイルスに対するワクチンに期待している人もいるかもしれない。だが、確認しておこう。もはや元の世界には戻れないということを。これまで続いてきた格差拡大と環境破壊を止めるためには、資本主義の「グレートリセット」が必要だ。だからこそ、マルクスに立ち返るべきなのである。
「人新世」の危機
コロナ禍は、すでに存在していた資本主義の構造的矛盾を徹底的に可視化した。中でも格差問題は深刻だ。昨春以降の米国ではビリオネアが資産を44%増やす一方、2000万人以上が失業した。感染抑止のためのデジタル化やオートメーション化が加速することで、富の一極集中はさらに深刻化するだろう。
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