新型コロナウイルスは現代資本主義の欠陥を暴き出した。過去に社会保障や公的医療の縮減を進めた多くの国では、コロナ禍の傷が一段と深まった。反対に公的部門に投資してきた国では、傷は全体的に浅く済んでいる。
国家は本来「最初の投資家」であるべきだ。ところが「最後の貸し手」として、高みの見物を決め込んでいる国が多すぎる。2008年の世界金融危機のように、一大事となってからでは経済対策のコストは莫大なものとなる。平時から先手先手で公共投資を進めたほうが、はるかに安上がりだ。
にもかかわらず、あまりに多くの政府がこの教訓から目をそらした。そして今回、新たな危機に直面し、国家が本来の役割を放棄したことが改めて露呈したのである。外部委託と偽の効率化による公的部門の空洞化だ。民間活力を美化したツケが回ったともいえる。
実はイノベーションが民間の“おはこ”だというのは神話にすぎない。このような虚構を信じる者が増えれば増えるほど、世の中の危機対応能力は落ちていくだろう。米バイデン政権を筆頭に各国政府がコロナ禍からの「よりよい復興」を目指しているが、それを成し遂げるには公共部門の再興が欠かせない。政府がイノベーションの源になってきたという現実を認めなくてはならないということだ。
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