2人の編集長を軸に描く、忖度しないメディアの遺伝子 ノンフィクションライター 柳澤 健氏に聞く

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やなぎさわ・たけし 1960年東京生まれ。慶応大学法学部卒業後、空調機メーカーを経て文藝春秋に入社。『週刊文春』『Number』編集部などに在籍、2003年独立。著書に『1976年のアントニオ猪木』『1985年のクラッシュ・ギャルズ』など。
2016年の週刊文春
2016年の週刊文春(柳澤 健 著/光文社/2300円+税/525ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
今やスクープの代名詞となった“文春砲”。それを放つ編集者や記者たちの奮闘、デジタル化で直面した危機とその克服を描く。

──2016年に『週刊文春』が数々のスクープを連発していたとき、社内は転換期を迎えていた。

編集長だった新谷学(現・編集局長)にとって、16年はデジタルで戦うという覚悟を決めた年。「スクープといえば文春」とブランディングし、紙の雑誌ではなくコンテンツを生み出すことで、ネットメディアとしての『週刊文春』を作っていくことに初めて手応えを感じていた。

もはや紙の週刊誌という仕組みの賞味期限は切れていた。スクープを連発しても部数的には負け戦が続き、昔のやり方は通用しない。でも古い会社だと金がかかるとかリスクが高いとか言われ、変えにくい。ネットに向けてメタモルフォーゼ(変身)しないと生きていけないときに、『週刊文春』という生き物がどのように生まれ、華やかな時代を過ごし、厳しい今を迎えているのかを書きたかった。

──新谷氏と花田紀凱(かずよし)氏、2人の元編集長に焦点を当てています。

花田さんと新谷は異色の存在。花田さんは女性読者を大幅に増やし、発行部数で『週刊文春』のピークを築いた。まさに雑誌の申し子で、週刊誌をいちばん愛していた編集長。当時の私はグラビア班に配属され、西川清史さん(元副社長)と故・勝谷誠彦と一緒に働いていた。文章も写真も上手な西川さんを、グラビア担当としてぜいたく使いするのが花田さんのセンス。花田さんはいつも睡眠4時間で働いていたが、78歳の今でも『月刊Hanada』の現役編集長で睡眠6時間という化け物だ。

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