近年、多くの国で所得や資産が富裕層に集中し、その傾向が顕著な米国では、2017年時点で上位1%の富裕層が国民所得の20%を占めた。これは下位50%の占有率12.5%を上回る。
今日の世界では、超富裕層が租税回避地を利用して富を蓄える一方、貧しい人々は十分な教育や医療さえ受けられない。日本でも、正規・非正規雇用間やジェンダー間、家庭環境による子ども間などでの格差問題が議論されている。
他方で、不遇な状況に陥ったのは本人の責任、困難は自助努力によって乗り越えるべきだ、という考え方も根強い。平等を支持する人々は、このような考え方にどう応えたらよいだろうか。どのような不平等が問題なのか、あるいは許容されるのか。本稿では、これらに関する厚生経済学や政治哲学の考え方を紹介する。また、筆者らが取り組む研究にも触れる。
さて、不平等にはお金だけでなく健康や教育など多様な要素があるが、話を簡潔にするため、お金に焦点を当てよう。例えば、A氏は資産2000万円、B氏は資産500円をそれぞれ持っているとする。この2人の格差をどのように是正すべきか。
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