2020年はコロナ禍で異例続きの1年となった。最低賃金もその例外ではなく、全国的に毎年約3%引き上げられてきた過去数年の流れは止まり、20年度の引き上げは事実上凍結となった。だが、菅義偉政権は最低賃金引き上げに積極的であるとみられ、事態がある程度収束した後、再び引き上げに舵を切る可能性は大いにあると思われる。
しかし、そもそも最低賃金はどんな水準に設定するべきなのだろうか。これを引き上げれば労働者の賃金が上昇し、彼らの助けになりそうだが、一方で、企業の人件費が上がり雇用が縮小して労働者にとって好ましくないことが起こる可能性もある。メリットとデメリットの厳密な比較は非常に難しく、多くの優れた研究が行われてきたにもかかわらず、完全な結論が得られたとは言いがたい。
本稿では、この問題を克服すべく筆者が考案した新手法による分析結果を紹介したい。新手法を一言でまとめると、「最低賃金引き上げが労働者にとって望ましいか否かは、住宅の家賃が最低賃金引き上げによってどう変わるかを見ればわかる」というものだ。
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