産業の過剰設備、すなわち景気がピークを迎えても使われないまま残存する余剰設備は、今日の世界で広く見られる。米国のいわゆる「ラストベルト」における自動車工業や鉄鋼業、そして近年急拡大した中国、韓国の鉄鋼業、造船業などの設備はその典型といえる。
日本では、1970年代から80年代にかけて、経済成長が減速しエネルギー価格が急騰した。その中で、高度経済成長を牽引してきた製造業の多くが「構造不況」に直面し、やはり多くの過剰設備を抱え込んだ。
過剰設備については、各国の政策当局も問題視しており、古くからその処理を促進するための政策を行ってきた。一方、過剰設備の発生メカニズムと処理政策に関する経済学的な分析は十分に行われてこなかった。それは、「過剰設備は市場における競争と淘汰を通じて早晩解消するはずである」という見方が経済学者の間で共有されているためと考えられる。
しかし、現実には過剰設備が中長期にわたって残存する場合が珍しくない。理論的にも、寡占市場における企業間の戦略的関係を考慮すると、過剰設備が発生しながらも安定した状態、経済学的にいえば「均衡」はありうる。
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