中国で公的年金への信頼が揺れている。定年延長の議論も本格化した。
中国の公的年金の支給原資が早ければ10年以内に100兆円単位で不足するとの予測が公表され、波紋を呼んでいる。支給開始年齢を引き上げたい政権の思惑も絡み、法定定年の延長議論もにわかに活発化し始めている。
中国の保険会社などで構成される中国保険行業協会は11月に発表した年金問題に関する報告書で「現在の状況で推移すると中国は今後5〜10年以内に8兆〜10兆元(1元は約16円)の年金支給原資の不足が発生し、その額は年々拡大する」と指摘、早急に対策を講じる必要があると警鐘を鳴らした。
中国で年金資金不足が指摘されたのは初めてではない。2019年4月、中国社会科学院が「全国都市職工基本養老保険(都市部の勤労者が対象の年金)の積立金が35年に枯渇する」との予測を公表している。それに比べて今回は、資金不足に陥る時期がより切迫した状態にあることが注目された。
資金不足の最大の要因は、計画経済時代の「負の遺産」だ。年金制度が未整備の時代に現役生活を送り、すでに退職した人は、所属企業も個人も年金保険料を負担していない時期が長くある。とくに公務員は14年の政策変更以前、年金保険料の雇用者、個人の負担ともにゼロだった。この部分は原資の蓄積がないため、財政余力の乏しい地方政府では、すでに収支がマイナスに陥るところも出ている。中国の年金は企業拠出分の基本年金(賦課方式)と個人が負担する個人勘定(積み立て方式)の2つで構成されるが、すでに一部の個人勘定の資金は、賦課方式のような形で現在の受給者への支払いに流用される例が頻発、問題化している。
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