──2013年に放送が終了した番組を、今なぜ本にしたのですか。
NHKの連続ドキュメンタリーの担当ディレクターとして9カ月間、米澤さんに密着した。番組では寡黙で努力家のボクサーとして描いたが、実際の彼は愚痴の多い普通の36歳男性。テレビではわかりやすさを求められるため、カットした内容が多い。「僕の見た世界はこんなものじゃない」という忸怩(じくじ)たる思いを引きずりながら、放送終了の1年後に書き始めた。書き終えたらスッキリして、そのままにしていたら、番組を見た映画プロデューサーから彼の話を映画にしたいと相談された。だったら読んでもらおうと原稿を渡したら、面白いから本にしようということになった。
──過去に数々の有名人を映像化していますが、米澤氏の魅力は?
これまでの取材対象は仰ぎ見るスターばかり。自分と重ね合わせることなどできない存在。対するB級ボクサーの米澤さんは自分と同じ場所にいると思っていた。ところが、彼はコールセンターで連日の夜勤をこなし、深刻な腰痛を抱えながら挑戦している。知れば知るほどたいへんな状況で、取材するうちに僕も入れ込み、彼も心を開いてくれた。
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