──もともと古典が好きだったのですか。
そうですね。きっかけは母国・イタリアの小中学校でギリシア、ローマ神話を学んだこと。これを「原文で読みたい」と思いました。そこで高校は古代ギリシア語やラテン語など、クラシックな教育を重視する高校に進学しました。
高校では3年かけてダンテの叙事詩『神曲』を通読します。原文はイタリアの古い方言で書かれていて、理解するには哲学、宗教、政治の知識を必要とする、とても難しいもの。文化的背景も今とは違う。多くの生徒は拒絶反応を起こしますね。ただ私にとっては簡単には読めないことはむしろ魅力でした。注釈を読み、辞書を調べながら、探偵になったような気持ちでテキストと向き合う。すると、これまで想像も及ばなかった豊かな表現の言葉が現れる。
──初めて読んだ日本の古典が『源氏物語』だったそうですね。
日本語を専攻していた大学時代、講義の一環で『源氏』54帖を通読しました。イタリアの教育では、重要な文学作品は一部を読むのではなく通読することが重要とされているんです。長い物語ですが、連続ドラマを見ているような感覚で結構楽しく読破できましたね。授業に行く前に友人と「昨日はどこまで読んだ?」「あの登場人物、ムカつくよね」とおしゃべりしたりして。
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