──冒頭で「人文知の果たすべき役割は、パンデミックは人から人にうつることだという常識から距離を置くことだ」としています。
生物医学的(バイオメディカル)に「ウイルスは人から人へうつる」と個人の体のレベルで考えると、外出しなければ感染しない、という話になります。しかし、人間は社会生活をしており、それは無理な話。21世紀になって先端医学が進んだので、ワクチンが開発されれば個人の体のレベルで解決できるんじゃないかと思われていますが、実はまだ難しそうです。そうすると、細菌やウイルスの存在がわからなかった昔、社会、集団として疫病にどう対処していたのかを考える意味があります。
──ミシェル・フーコーの「生政治(バイオポリティクス)」という概念を導きの糸としています。
「ポリティクス」という場合には、人権、表現の自由、参政権などを考えることが多いでしょう。それとは違う社会権、人間が生きているというところからスタートして、生きることを守る、あるいはそれを管理するといった「生きている人間をどう扱うか」を考えることを、バイオポリティクス、生政治と呼んでいます。
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