
あらかわ・きよひで 1949年生まれ。専門は日中対照研究、近代の日中語彙交流、現代中国語の文法と語彙。中国語教育学会会長、日本中国語学会副会長などを歴任。NHK中国語講座の講師も。『近代日中学術用語の形成と伝播』『日中漢語の生成と交流・受容』など著書多数。
調査、熱帯、化石、空気、健康……。普段は気にかけていないものの、「この言葉はどうやってできたのだろう」と考えると、よくわからない言葉がある。漢字は中国から来たものだが、言葉そのものや意味が中国と同じものもあれば、違うものもある。漢語が作られた謎に迫ると、日中を中心とした世界史が見えてくる。
──「漢語」とは、「漢字を使った熟語」ということですか。
厳密に言うと、漢字を「音読み」した言葉です。中国での漢字の読みを日本人の耳で聞いて、日本式に取り入れたのです。例えば、「入口」は日本では訓読みで「いりぐち」と言いますが、音読みで「にゅうこう」とは言わない。これは、古い日本語の「いる」と「くち」が合わさった和語です。
──中国から来たものだろうと漠然と思うくらいで、日頃はその言葉の由来まで考えません。
そうでしょう。そこで読者の関心を著者のほうからかき立ててみたいと考えたのが、本書を執筆した動機の1つです。
日中双方は長い交流を続けてきましたが、漢語のでき方は実は同じではありません。漢字表記を共通にする言葉である「日中同形語」の作られ方には、時代や人の往来などさまざまな要因があります。とくに近代になってできた漢語の中には、日本と中国のどちらでできたものかよくわからないものがあります。
日本人が作った漢語が中国で使われるケースも
──そういった漢語は、日中をどのように往来したのでしょうか。
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