 
──能楽堂などで見る一般的なお能とは違いますね。
黒川能は、春日神社を鎮守とする村の暮らしに根差したお祭りです。旧正月の2月1日から2日にかけて行われる王祇(おうぎ)祭では、神社の御神体「王祇様」を上座と下座、2軒の「当屋(とうや)」へお迎えします。そこで夜を徹して能と狂言が演じられ、村人は能舞台を囲んでごちそうをいただく。こうして神と人がともに饗(きょう)することで、1年の恵みに感謝し、新年の五穀豊穣を祈念する。伝統芸能というより、共同体のための神事なのです。
──取材は半世紀前。なぜ今、本にしようと考えたのですか。
きっかけは、母の聞き書きを基に2010年に出版した『一〇〇年前の女の子』です。母は米寿を過ぎた頃、「わたしにはおっ母さんがいなかった」と自分の生い立ちを口にした。驚きました。と同時に母は、故郷である栃木県高松村(現足利市)の暮らしを生き生きと語り、それを私が“高松村物語”に紡ぎました。






 
         
         
        
       
        
       
         
         
         
         
         
         
         
        













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