没後40年、貸倉庫で発見された『大地』パール・バックの遺作 翻訳者 戸田章子氏に聞く

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とだ・あきこ 1963年生まれ。上智大学外国語学部英語学科出身。同時通訳者として外資系製薬会社に勤務した後、4代前の祖先が創設した公益財団法人原田積善会へ。現常務理事。(撮影:吉濱篤志)
Pearl S. Buck 1892〜1973年、米国の女性小説家。長老派宣教師の両親とともに前半生の40年を中国で送る。代表作『大地』でピュリツァー賞、その後ノーベル文学賞を受賞。
長編『大地』で知られる米国人ノーベル賞作家、パール・バック。死後40年間行方不明だった遺稿が、晩年の地から遠く離れたテキサス州の貸倉庫で発見された。生まれながらに並外れた知能を持つ青年の成長物語。翻訳した戸田章子氏はそこに、老いてなお人生の驚異、人生の意味を求めてやまなかった著者の渇望を見る。

──2012年、遺稿発見時は大きく報じられたのですか?

米ニューヨーク・タイムズ紙を筆頭に「ついに発見」という大見出しが躍りました。1938年に一連の作品でノーベル文学賞を受賞して以降、しばらく顧みられなくなっていたパール・バックでしたが、全米で人気の司会者、オプラ・ウィンフリーが自身のテレビ番組で『大地』を取り上げ、追って伝記本も相次ぎ出版された。彼女に再度スポットライトが当たる素地はできていました。

──『大地』単独ではピュリツァー賞を受賞しているんですね。小説だけど、報道寄りの賞で。

ノーベル賞受賞をめぐって「ちょっと大衆的すぎる」と批判が出たくらい、読みやすい文章で書かれています。中国・清朝末期の時代、人間の根源的なもの、土に足を着けて生きる貧農がはい上がっていく話で、出産や死、貧しさゆえの子殺しなどを赤裸々に描いた作品です。お砂糖をまぶすようなことはせず、彼女自身、口当たりのいい小説ではないと語っています。それでも読者からは支持され、二十数カ月世界販売1位という大ベストセラーになりました。

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