市場経済化でコネより金に、賄賂の額で物事が決まる 日本貿易振興機構アジア経済研究所 主任研究員 岡 奈津子氏に聞く

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おか・なつこ 1968年生まれ。94年東京大学大学院総合文化研究科にて修士号を取得後、アジア経済研究所入所。2008年、英リーズ大学政治国際関係学科博士号取得。専門は中央アジアの政治と社会。90年代半ば以降、2度の長期滞在を含め、ほぼ毎年カザフスタンを訪問している。(撮影:ヒダキトモコ)
裁判での有利な判決、徴兵の回避、学校の成績や学位論文、長蛇の列に並ばずに受診──。ソ連崩壊から30年弱、資本主義の波に洗われた中央アジアの大国・カザフスタンは、金で何でも買える社会になっていた。

──現地で警察に連行されました。

調査協力者に紹介された主婦に、彼女の家で賄賂について聞いていたら彼女の夫が現れて「何でそんなことを聞く、怪しいやつだ」と警察を呼ばれました。署では写真を撮られ、指紋を採取され、最後は移民警察のトップが「二度とこのような調査はしないように」と。幸い調査は続けられましたが。

──「非公式な問題解決」が蔓延。

ソ連時代の「非公式な問題解決」は主としてコネによるものでした。互酬的関係に基づいて便宜がやり取りされた。1990年代以降、金と引き換えに便宜を与える、受けた便宜を金で清算するという方法が主流になっています。

非公式な金品のやり取りが日常生活の一部になっているのはカザフスタンだけではなく、旧ソ連やその影響下にあった東欧では多かれ少なかれ似たような状況です。カザフスタンは相対的に開放的で外国人でもこうした調査ができる。報道の自由度も比較的高いので腐敗の情報も多い。情報の少ない国のほうが、腐敗が深刻な可能性はあります。

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