10月7日午前9時10分ごろに能登半島の北西約350キロメートルの海域で、北朝鮮漁船と水産庁の漁業取締船「おおくに」が衝突し、漁船が沈没した。沈没事故が起きたのは日本海の好漁場である大和堆周辺で、日本の排他的経済水域(EEZ)内だった。直ちに水産庁と海上保安庁が北朝鮮船の乗組員を救助した。〈乗組員は「60人が乗っており、全員救助された」と話しており、別の北朝鮮漁船が現場で全員を引き取った。一方、江藤拓農水相は同日、漁船が急旋回した後、漁業取締船に衝突したと明らかにした〉(10月7日「共同通信」)。
水産庁と海上保安庁が北朝鮮漁船員を拘束し取り調べなかったことに対する批判が、一部にある。〈8日朝、自民党本部であった水産部会と水産総合調査会の合同会議。「我々の海なんだから徹底的に守り、取り締まるのが筋だ」「せめて漁船の幹部は国内に連行して事情聴取できたのでは」。議員からは水産庁に厳しい取り締まりを求める声が相次いだ〉(10月9日「朝日新聞デジタル」)。しかし、この種の批判は、国際法への認識を欠いた間違った内容だ。日本のEEZ内であっても公海なので、北朝鮮船が航行もしくは停止しているだけでは国際法に違反しない。日本のEEZ内で操業する外国漁船は日本政府による明示的許可を得る必要がある。日本は北朝鮮漁船のEEZ内における操業を認めていない。しかし、北朝鮮漁船は漁場の探索を行っていただけで、実際に水産物を漁獲した現場を押さえたのではない。水産庁の漁業取締船が、北朝鮮漁船員を拘束したり取り調べたりすることはできないという判断をしたのは順当と思う。任意の事情聴取なら可能だが、北朝鮮漁船員が拒否すれば何もできない。水産庁の漁業取締船は、日本の海洋資源を守るために適切な取り締まり活動を行い、沈没事故の発生に関しては人道的観点から全力を尽くして北朝鮮漁船員を救助した。誠実に職務を遂行していたのである。
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