「琉球新報」が、米国が沖縄を含む日本に中距離弾道ミサイルを配備する計画があるというスクープを1面トップで報じた。〈中距離核戦力(INF)廃棄条約が8月2日に破棄されたことで、条約が製造を禁じていた中距離弾道ミサイルの新型基を、米国が今後2年以内に沖縄はじめ北海道を含む日本本土に大量配備する計画があることが2日までに分かった。琉球新報の取材に対し、ロシア大統領府関係者が水面下の情報交換で米政府関係者から伝えられたことを明らかにした。その情報によると、米国は2020年末から21年にかけての配備を目指し日本側と協議する。配備されれば基地機能が一層強化され、核戦争に巻き込まれる恐れが高まり、沖縄の基地負担が飛躍的に増す〉(10月3日「琉球新報」)。
興味深いのは、この情報がクレムリン(ロシア大統領府)から出ていることだ。前回の本連載で筆者は、9月末に入手したクレムリン文書を紹介した。そこには〈状況は複雑で、米国がINF(中距離核戦力)全廃条約を放棄したことで新しい問題も生まれた。ワシントンからの非公式データによれば、米国は2020年末から日本に新しい短距離・中距離ミサイルの配備を始める。モスクワはこれを非常に心配している。これは沖縄だけでなく、ロシア極東軍事基地に近い日本の北方でも計画されている〉と記されている。クレムリンはこの情報を「琉球新報」にも提供したのだと思う。それを手がかりに、「琉球新報」はクレムリン関係者(筆者の推定では安全保障会議筋)から詳細な情報を得た。モスクワに支局を持つ全国紙が取れないクレムリン内部の情報源に「琉球新報」がアクセスできたこと自体がこの新聞のインテリジェンス能力の高さを示している。〈ロシア大統領府関係者によると、8月26日にワシントンで、INF条約失効を受けてアジアにおける米国の新戦略をテーマにした会議が開かれ、新型ミサイルの配備地として日本、オーストラリア、フィリピン、ベトナムの4カ国が挙がった。韓国も米国の同盟国だが、非核化に向けた米朝交渉が進められているため当面は除外された。/日本配備は沖縄と、北海道を含む本土が対象で、中でも沖縄配備について米国は当然視しているという。/同関係者は、近く新しく策定されるアジア太平洋地域での米軍プレゼンス拡大計画で、沖縄の米軍基地の重要性が再確認される可能性が大きいとも指摘した。尖閣諸島や南沙諸島を巡り米中が艦船を攻撃するなどの限定紛争が2、3年内に起きると想定し、米国は在沖米軍基地の機能を重視しているという〉(前掲「琉球新報」)。
この記事は有料会員限定です。
東洋経済オンライン有料会員にご登録いただくと、有料会員限定記事を含むすべての記事と、『週刊東洋経済』電子版をお読みいただけます。
- 有料会員限定記事を含むすべての記事が読める
- 『週刊東洋経済』電子版の最新号とバックナンバーが読み放題
- 有料会員限定メールマガジンをお届け
- 各種イベント・セミナーご優待
無料会員登録はこちら
ログインはこちら