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現場はなぜ強いのか 「豊田章男 100年の孤独」 第27回

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(撮影:尾形文繁)

トヨタ自動車が現場を大切にしてきた話は、枚挙にいとまがない。創業者の豊田喜一郎は、工場の2階に寝泊まりしていた。トヨタの創立記念日は、会社の登記日ではなく挙母(ころも)工場の竣工日である11月3日だ。

豊田章男もまた、徹底して現場を重視する。

某日、トヨタ副社長の河合満のスマートフォンに、LINEのメッセージが入った。章男からだ。

「ウチは大丈夫か?」

河合は、すぐに返事をした。

「大丈夫です」

翌週の月曜日、河合は各工場を見て回った。

「あれ、河合さん、何しに来たの?」

と聞かれた。河合はその週、山登りのために休暇を取っていた。

「いや、おまえたちがあの事件で動揺しているんじゃないかと思って、激励に来たんだよ」

と、彼は答えた。

「あの事件」とは、2017年9月、日産自動車の無資格検査の発覚である。

近年、自動車メーカーによるデータ改ざんが連続して起こった。日産の報告書によると、無資格者による完成車検査や排ガス・燃費データの改ざんは、現場の人手不足、コスト削減に加えて、現場への過度のプレッシャーが背景にあったとされる。日産に限らず、一般的に、現場と管理者の間には「組織の壁」がある。

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