「シェアリングエコノミーは今歴史的岐路に立っている」 インタビュー/米NYU Stern教授 アルン・スンドララジャン

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世界で旋風を巻き起こした「シェアリングエコノミー」が今、岐路に立たされている。米国屈指のオピニオンリーダーが現状を語る。

Arun Sundararajan 1971年生まれ。インド工科大学卒業。98年から現職。専門はデジタル経済学。シェアリングエコノミー研究の第一人者。米国議会や政府機関への助言のほか、米ニューヨーク・タイムズや英フィナンシャル・タイムズなど、多くのメディアに論説やコメントを提供。(撮影:今井康一)
ライドシェアサービス大手の米ウーバー・テクノロジーズや民泊サービスの米Airbnb(エアビーアンドビー)など、シェアリングエコノミーを担う巨大企業が過去10年の間に次々と生まれた。しかし、新たな産業は往々にして、政府の規制強化に直面する。とくに、ネット経由で単発の仕事を請け負う「ギグワーカー」と呼ばれる労働者の扱いをめぐり、政府と企業の攻防が活発化。これまでテクノロジー企業の規制に消極的だった米国政府の姿勢も変わり始めている。
シェアリングエコノミー研究の第一人者で、デジタル経済の専門家として米国議会や政府機関に助言する、米ニューヨーク大学スターン・スクール・オブ・ビジネスのアルン・スンドララジャン教授に、大手テクノロジー企業の行方について聞いた。

──著書『シェアリングエコノミー』を出版してから、3年が経ちました。この間、新たな経済圏を担うプレーヤーはどのように変化してきましたか。

消費者の視点からいえば、シェアリングエコノミーが持つ可能性の大半が、交通と宿泊の分野で示された。交通分野でいうとウーバーは、今やそれが出現する以前の世界のタクシー業界よりも多くの収入を毎年稼ぎ出している。宿泊分野でもエアビーアンドビーは、世界のトップ5のホテルを合わせた数よりも多い客室在庫を抱え、1晩の宿泊者数は米ヒルトン、マリオット両グループの合計よりも多い。すでに業界のリーダーだ。

一方で、予想していなかったような業界で活発な動きがあった。例えば飲食業だ。(飲食店から料理を宅配するウーバーイーツなどの)サービスが進化した結果、宅配料理を専門とする、店舗を持たない飲食店の形も生まれた。

──どの産業でもシェアリングエコノミーが主流になりますか。

シェアリングエコノミーは、今後20年間は成長を続ける。ただ産業構造を丸ごと入れ替えることにはならないだろう。伝統的なものとシェアリングエコノミーの経済モデルは共存する。最も先進的な国々においては、この共存により、GDP(国内総生産)の健全な2桁成長が実現するだろう。

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