東芝が半導体事業に大ナタ、競合サムスンに生産委託
そしてもう一つの改革策が、08年に900億円でソニーから取得した、長崎工場のソニーへの売却だ(売却額は推定500億円)。長崎工場では、ソニーの「プレイステーション3」の心臓部に使われる高性能LSI「セル」を生産。ソニーから設備を購入した当時、東芝はセルをNAND型フラッシュメモリに次ぐ、半導体部門の柱に育てる構想を描いていた。が、ゲーム機以外への用途展開が思うように進まず、工場買収は完全な裏目に出ていた。
今回、長崎工場を売却することで、先の見えないセルから撤退。収益改善の遅れていたLSIの生産もサムスンなどに外注することで、東芝の改革はやっと進展しそうだ。
実現しなかった再編劇
元はといえばLSI事業テコ入れは2年に及ぶ懸案事項だった。「業界再編を含む抜本的な構造改革を検討する」。09年1月、西田厚聰・当時社長(現会長)はこう発言。リーマンショックで過去最大赤字に沈む中、東芝は半導体部門の改革へ動こうとしていた。当時はNECエレクトロニクス(現ルネサスエレクトロニクス)との統合や富士通との協議が報じられたが、いずれも実現せず。東芝はライン集約など、地道なコスト削減に自力で取り組んできた。
その後、半導体部門の中核を成すNAND型フラッシュメモリは、市況回復を受け一気に好転。だが一方、半導体売り上げの約3割を占めるLSIは、改善したとはいえ、11年3月期の上期も赤字が残り改善の遅れが目立つ。得意のNANDで世界2位の座を維持するためにも、不振のLSIで1000億円規模の投資競争を続ける余裕はない--。最先端LSIの生産から手を引くことは、競争力ある分野に一段と資源を集中するには半ば必然であった。