北朝鮮では、元旦に金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長がテレビを通じて「新年の辞」を述べることが慣例となっている。今年も去年と同様に金正恩氏はスーツ姿だった。人民服ではなくスーツを着ることで、「普通の国家」の元首であるというメッセージを国際社会に示そうとしたのである。また、上着には、金日成(キムイルソン)(祖父)・金正日(キムジョンイル)(父)のバッジが付いていなかった。これも去年と同様であるが、金正恩氏が父・祖父の遺訓にとらわれず政策決定に当たっており、フリーハンドを持っていることを示すものだ。
「新年の辞」では、農業、水産業、軽工業を重視し、国民の生活水準を向上させる意思を強調している。引用文は事実上、北朝鮮政府が運営しているウェブサイト「ネナラ」(朝鮮語で“わが国”の意味)に1月1日に掲載されたものを用いる。〈人民生活を画期的に向上させることは、わが党と国家の第一の重大事です。/社会主義経済建設の主要攻略部門である農業部門で増産闘争を力強く展開すべきです。/(中略)軽工業部門では、近代化、国産化、品質向上の旗をひきつづき高く掲げて人民に好まれる各種の消費財を生産、供給し、各道・市・郡で基礎食品工場をはじめ地方産業工場を近代的に一新させ、地元の原料、資源に基づいて生産を正常化しなければなりません〉。北朝鮮にも民意がある。食糧を確保し、日々の生活を向上させることが北朝鮮国民の要望であることを金正恩氏は正確に理解している。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
東洋経済ID 会員特典
東洋経済IDにご登録いただくと、無料会員限定記事を閲覧できるほか、記事のブックマークや著者フォロー機能、キャンペーン応募などの会員限定機能や特典をご利用いただけます。
東洋経済IDについての詳細はこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら