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北朝鮮の現実 普通の国にはなれない

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米投資家ジム・ロジャーズは、「今、最も有望な投資先は北朝鮮だ」とアピールする。地下資源は豊富、国民は手先が器用で、しかも労働コストは格安。数年以内に北朝鮮は韓国と統一され飛躍的な経済発展を遂げるというストーリーである。きっと、トランプ米大統領が語った話も同じようなものだったろう。ポンペオ米国務長官も、北朝鮮が非核化すれば世界と交流できる「普通の国」になると秋波を送っていた。

確かに、ほんの数カ月前まで北朝鮮の未来をこんなふうに語る人は誰もいなかった。おそらく、6月12日の米朝首脳会談を前に、トランプ氏は北朝鮮が経済発展する夢を思いつき、金正恩(キムジョンウン)委員長に話した。以下は筆者の想像であるが、大筋は間違っていないと思う。

「万事、私に任せて、あなたは完全に非核化する約束を守ってくれればよい」。最初は黙って聞いていた金氏はしばらくしてうなずき、やがて相づちを打つようにさえなった。それを見てトランプ氏は「金正恩は俺の思っていたとおり、賢いやつだ」と目を細めた。金氏は体制保証や中国との関係のことをトランプ氏に尋ねた。すると、トランプ氏は、「絶対に悪いようにはしない。信じてほしい」。

金氏がトランプ氏のことを信じたとしよう。非核化を約束どおりに実行する。制裁は解除されて、日韓から経済援助と投資を得たとする。それでも金氏は不安を抱き続けるだろう。もしも、2020年秋の米大統領選挙でトランプ氏が再選を果たすことができなかったとすれば、北朝鮮と米国の融和もまた反故になる。

困るのは中国

そうした不安が払拭できないため、核開発の再開をひそかに準備する。中国が軍事的に支援してくれるという保険も、決して捨てはしないだろう。北朝鮮が普通の国となる可能性は、金氏の立場になって利害得失を考えると、やはり低いだろう。

北朝鮮が普通の国になって困るのは中国だ。特に金体制が親米的になることは、北京から近い距離に自分たちの自由にならない国ができることを意味する。中国は北朝鮮が非核化して、米軍が韓国に設置した高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)が撤去されることを望む。朝鮮戦争の終結宣言が行われて、在韓米軍が撤退することはさらに歓迎だろう。

ただし、その範囲を超えて金体制が力を失う朝鮮半島の統一には慎重であろう。米国や日本、韓国の企業が大量に進出し資本主義国となった北朝鮮は、より親米に傾く可能性があるからだ。

約150年前から朝鮮半島は中国・ロシア・日本の間で地政学的リスクの火種を抱えてきた。それが一足飛びに普通の国に転換できると考えるのは、やはり幻想でしかない。

(無学無名)

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