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元官房長官の口述歴史 不透明な政治の闇映す

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国会で答弁する元官房長官の故・野中広務氏(撮影は2014年2月)(読売新聞/アフロ)

つい先日、『聞き書 野中広務回顧録』が出版された。計13回にわたり、筆者を中心に故・野中氏に聞き取りしたオーラル・ヒストリー(口述歴史)である。聞き取った時期は2008年6月から10年10月。ちょうど自民党中心の政権が崩壊し、民主党への政権交代が起きたときであった。

すでにハードカバー版で12年5月に公刊されていた本書は、異例なほど版を重ねていた。ちょうど民主党政権が崩壊する時期であり、かつての自民党政権を問い直したいという機運が読者の間に渦巻いていたのであろう。その後品切れを惜しむ声もあり、文庫本での新装刊行となった。

野中氏が死去したのは18年の1月であった。今回の新刊が投げかけるのは、死してなお読まれるオーラル・ヒストリーとは何なのかという問いである。それは昨今の政治状況に対して、どのように関係づけられるだろうか。

語り手が死してなお読まれるオーラル・ヒストリーと言えば、かつては「カミソリ」の異名で田中角栄の懐刀とも言われ、中曽根康弘内閣の官房長官を務めた故・後藤田正晴氏の『情と理』だった。これも筆者は聞き手の一人として参加していた。聞き取りは1995年9月から97年12月。記録は、98年に講談社からハードカバーで出版された後、講談社+α文庫として装いを改めて刊行されて現在に至っている。野中・後藤田両氏ともに、首相経験者でもなければ派閥の領袖(りょうしゅう)でもなく、黒子に徹するタイプの政治家であり、有力派閥に属したものの派閥幹部とならず、一匹狼型の政治家だった。

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