相続の転換点となる今回の見直しでは、新しい制度が導入された。各項目のポイントを押さえよう。
「遺産分割のために、住み慣れた自宅を売却して引っ越さなければならない」──。残された配偶者のこうした問題を解決するのが、今回の法改正でできた「配偶者居住権」だ。
配偶者居住権の創設により、夫が亡くなった場合でも妻は自宅に住む権利を得られ、安心して老後を過ごせる。高齢化の時代に対応した法改正で、遺産分割が大きく変わる可能性もある。
Q.「配偶者居住権」について教えてください
岩田 法改正前、残された配偶者は遺産分割に伴い自宅を相続したものの、現金が手元に残らないというケースもあった。残された配偶者の状況によっては、自宅だけを相続するのがよいわけではない。住む場所があっても肝心のおカネがなければ、生活費や医療費、緊急的な出費に困ってしまう。
法改正後は「配偶者居住権」という新しい考えを取り入れ、住み慣れた自宅にそのまま居続けながら、遺産分割時におカネも受け取れるようになった。
関根 具体例(図表1)を見てみよう。亡くなった夫が8000万円の自宅と4000万円の現金を残したとする。仮に法定相続分で分けるとすると、妻は半分の6000万円を、長男と二男はそれぞれ3000万円を相続する。長男と二男に計6000万円を渡すためには、手持ちの現金4000万円では足りない。そこで妻は家を売って現金化したうえで、長男と二男に合計6000万円を渡す必要があった。
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