東京医大事件などまるでなかったかのように、医学部人気は健在だ。しかし、将来の少子化をにらみ、医学部・医科大の生き残り競争は始まっている。
「東京医科大学が採択されたのを見て、よく通ったな、と不思議に思っていた」
ある私立大学の幹部は、東京医大事件について、そう振り返る。汚職の舞台となった文部科学省の私立大学研究ブランディング事業(研究活動を支援する補助金を交付)に採択されたのは、関東地域では総合大学が多かったからだ。
しかし、受験生や保護者の医学部熱は、東京医大事件などどこ吹く風だ。7月に都内で開催された医学部受験セミナー。会場は親子連れや高校生であふれている。
私立大で最も学費の安い国際医療福祉大学(千葉県成田市)は「8月の2日間で2400人の枠はすぐにいっぱいになった」とうれしい悲鳴を上げる。
ただ、さすがの医学部人気にも、少しずつ少子化の影が差し始めている。足元の18歳人口は120万人前後で推移しているが、2020年代以降、再び減り始める。医学部受験予備校大手・富士学院の坂本友寛学院長は「今年に入り、生徒数が減って医学部専門予備校の破綻が出始めている。昨年あたりから受講料のダンピングも起きている」と表情を曇らせる。
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