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米朝の駆け引きから21世紀の外交が見える(4) 周回遅れの日本外交は6者首脳会談を提案せよ

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米朝首脳会談について、まとめてみる。6月12日の米朝首脳会談後の記者会見でトランプ米大統領が、北朝鮮による日本人拉致問題について〈「安倍首相にとって重要な問題だ。(金正恩[キムジョンウン]氏に)提起した。合意文書には盛り込まれなかったが、今後協議する」と述べた〉(6月12日「朝日新聞デジタル」)ことが大きく報じられている。トランプ氏による仲介を、日本のマスメディアは肯定的に報道・評価している。

しかし、客観的に見て日本にとって危険なのは、拉致問題に対する再調査の回答を金正恩・朝鮮労働党委員長がトランプ氏に対して行うことだ。北朝鮮側の回答の内容が、日本として受け入れがたい代物である可能性が高いからだ。日本が北朝鮮と直接交渉しているならば、このような回答は受け取りを拒否することができる。

しかし、トランプ氏が仲介に入るとそうはならない。トランプ氏と金正恩氏の間に信頼関係が確立している。次回の米朝首脳会談で、金正恩氏がトランプ氏に「これが拉致問題に関する真相だ。安倍晋三首相に伝えてくれ」といって手紙か口頭メッセージを託す可能性がある。トランプ氏としては、金正恩氏の依頼を受け入れるであろう。北朝鮮の回答が日本として受け入れがたい内容である場合、仲介した米国の立場を困難なものとするリスクがある。この観点から、日本政府は北朝鮮との直接交渉を近未来に再開する方向に動くと筆者は見ている。

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