問われ続ける日本としての意思決定
評者 福山大学経済学部教授 中沢孝夫
「海」のもつ、深く多様な意味を、専門外の人間にもわかりやすく解いた本である。本書を読み終えた時、読者に伝わってくるのは、私たちの暮らしは世界の平和な秩序によって守られること、そしてその秩序は、圧倒的に米国によって担われていること、その中核は米海軍にあること、だ。むろん、日本を含めた多数の同盟国・友好国とのネットワークも秩序形成に欠かせない。
いうまでもなく世界は、必ずしも「平和」ばかりではない。イスラム圏やアフリカのいくつもの国に見られるように、殺戮・破壊・侵略が横行しており、中国のように南シナ海の新たな支配権をもくろむ国もある。しかし著者が案内する世界の海は、もともと戦乱の日常と交易の場であった。
著者は過去の海戦をたどりながら次のように言う。「もし命を落とした戦士たちの遺体が突然、地中海の海面に浮かび上がったとしたら、その上を歩いて渡れるほどだろう」と。「陸」も同様だが、本書が語る何千年という「戦史」を読んでいると、いや、まったく人類は殺戮に懲りることがない。
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