稀有な“湛山イズム”の真髄を解き明かす
評者 早稲田大学講師 上田美和
石橋湛山(1884〜1973年)は、没後40年以上を経た今日でも、日本史学や政治学といった、いわゆる学界内の研究対象にとどまらず、テレビ番組・新聞雑誌をはじめとする、マスコミ・ジャーナリズムの関心を引き続ける存在である。本書は、「ミネルヴァ日本評伝選」の一冊であり、45年の長きにわたり、石橋研究に携わる著者による最新版の伝記である。
伝記という性格上、本書は石橋の子ども時代から始まり、『週刊東洋経済』の前身である『東洋経済新報』のジャーナリスト時代、戦後政治家として内閣総理大臣にのぼり詰めるまでの政治過程、晩年にいたるまで、その一生を論じている。著者のこれまでの石橋研究と、石橋に関する基礎資料のみならず、関係者の証言、石橋湛山記念財団刊行の『自由思想』等、近年の雑誌掲載記事にも依拠している。
著者の問題意識は次のように明確である。第一に、石橋はなぜ透徹した歴史意識をもち得たのか。第二に、なぜ、将来の日本と世界を的確に予測できたのか。第三に、なぜ、「剛毅・叛骨・楽観・繊細・不屈・リベラル」という稀有な人格が形成されたのか。これらの観点から、石橋の生涯が解きほぐされていくのである。
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