二度と金融危機は起こさずに済むのか
評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎
金融危機の際は、十分な担保と金利を取ったうえで中央銀行が民間銀行に潤沢な資金を供給する。「最後の貸し手」論の嚆矢となったバジョットルールは、近年の世界金融危機では適用できなかった。民間銀行が大量のリスク資産を購入し、担保となる安全資産を十分持っていなかったのだ。
二度と金融危機は起こさないという強い決意で、世界展開する大銀行への規制を強化したが、本当に大丈夫か。
本書は、金融規制は未だ不十分と論じる。著者は2013年までの10年間、英国の中央銀行総裁を務め、危機収束の陣頭指揮を執っており、その意見は見過ごせない。中央銀行のあり方を含め、歴史、実務、理論から金融経済の深層に迫る重厚な一冊だ。
民間銀行は流動性の高い預金など短期資金を負債に受け入れ、リスクの高い長期資産に投資して利ざやを稼ぐが、それこそが錬金術と批判する。リスク変換といっても、危機時に流動性の低いリスク資産を安全資産に交換するのは土台無理な話で、銀行システムは本質的に脆弱性を抱える。
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