
市場に「カモ」釣りを促すメカニズムが内在と主張
評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎
金融の世界では、情報豊かな洗練された人々が、そうではない人々を「カモ」にして、大きく稼ぐというのはよく聞く話だ。カモ釣りが広がり、価値のまったくない金融商品を高値で大々的に販売し、挙句の果てに世界経済を危機の淵に追いやったのが米国の住宅クレジットバブルだった。金融界に市場万能主義者が多いのは、カモが次から次へと現れ、自らは常に勝者になると考えるからではないのか。
そんな疑念から評者は金融規制の緩和には常に慎重だ。ATMやモバイルバンクを除くと金融イノベーションと呼ぶものの多くは詐欺まがいではないのか。一方、実業の世界のイノベーションは生産性を高め、経済厚生を確実に改善するから、規制緩和を積極推進すべき、と考えてきた。
だから本書の主張には強い衝撃を受けた。金融以外のあらゆる分野でもカモ釣りが横行しているというのだ。結婚式や住宅購入など、人生の特別な買い物はカモ釣りの絶好の機会。健康に有害な医薬品が未だに後を絶たないのもカモ釣りが原因。選挙も典型的なカモ釣りだという。





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