戦後派社長大いに語る 成功への秘ケツと苦心談を語り合う
[対談]三洋電機 井植歳男氏、本田技研 本田宗一郎氏
創業当時の苦心
──本田技研は昭和23年9月の創立、また三洋電機は25年4月の創立で、いわゆる戦後派と申しては失礼ですが、ともに大いにのしていられる。既設メーカーに伍して頭角を現した苦心談なり経営の独自さ、御抱負などについて、うかがいたいのです。
井植 創業当時は、設備は貧弱ですし、資力にも乏しく、頼むところは従業員の熱意と努力だけでしたね。しかしいつの場合もそうですが、先輩メーカーから凡(あら)ゆる面において、圧迫を受けました。最初は自転車の発電ランプを手がけたんですが、そのメーカーとしては17番目です。
私共の苦心したのは、不良品を絶対に出さないということです。歴史を持つ先輩メーカーが、仮に5回不良品を出しても、大してひびかないが、新進メーカーでは1回の不良が致命傷になりますからね。他社の弱点がこうだから、そこを狙えとか、他人の間隙を縫ってやって来たとかいうわけではないのです。堂々の陣ですよ。そういう心構えの蓄積で、今日まで大過なく来られたと思うのです。
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